遊びの旅人のメモ帳

ゲームや漫画のアレコレを語るメモ帳

大きな子供はラジコンを操作したい

大人も子供も働く華やかなフィールド

その舞台の名は芸能界

しかし、その世界には過酷と現実という深い影が同居する

その深い影に切り込んだのがサイコミで木曜連載中の「ヒナ」である

 

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芸能プロダクション『フライトフェザー』の新入社員である烏丸省吾(からすま しょうご)は、そこに所属する天才子役・高宮雛(たかみや ひな)と出会い、子役と芸能界の影に触れ子役の人生について考える話である

 


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ここでは、この作品で生まれた人や人生にまつわる名言を何個か紹介しよう

 

  • 『良い子』の定義

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3話 「小さな大人」より

 

大人にとっての”良い子とはどんな子なのだろうか

劇中では、このように言っている

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『求められるものに素直に応えられる手のかからない子』とは、つまりは大人の思い通りに動いてくれる子供“大人にとっての”良い子なのだ

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このような良い子であり続けると周りが見えず褒められる事だけを考えるだけの『褒められたがり君』に成り下がってしまう

この『褒められたがり君』は何も子供だけに限った話ではない

「褒められたい」と思っているたげなく「この人に逆らってはいけない」など服従し思考を停止して服従されてる人間、つまりは心理的にグリップされた(主従)関係は誰にでも起こりうる関係なのだ

 

  • 親のエゴ

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12話 「提案」より

 

“悪い意味で”子供に熱心な親のあり様を言い表したセリフ

劇中では結果が出ない子供に対して、たくさんの習い事をさせ子供に結果を出させようと空回りする親の執念はもはや病気の域だ

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子供は親の所有物と考えた結果、親だけ目線で色々習い事をさせて子供本人から『何がしたいのかをちゃんと理解していなかった事が原因で起きたケースと言える

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このような所有物の考えがひどくなれば子供の人生は子供自身のものではなくなる

それは親の人生の代用品・2周目の人生の始まりである

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(『暗殺教室』(作・松井優征)より)

 

  • “人”と“物”

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22話 「京極」より

 

人材の価値観に対して致命的なズレが起きたことで統括部長の京極弘次郎(きょうごく こうじろう)と対立を起こすシーン

 

「人と物の違いは何か?」と聞かれたら、どう答えるだろう

自分なら

 

考えて選べる者のが“人”

刺激と反応をする(繰り返す)者が“物”

 

と答えるだろう

例えば『みんなに楽しんでもらえるタレントになるにはどうするか?』と考えた時

“人”の場合、自分で考え、見たり聞いたり体験して、どうするのかを試したり選んだりして答えを見出す

対して“物”の場合、他人が考え(こうして欲しいと思ったものを)与えられたモノを淡々とこなす者を指す

要はボタンを押したら要求通りの動きをするロボットと同じなのだ

まさに「奴隷の理想型」を語った京極の考えに烏丸が反発するのは当然の反応と言えるだろう

 

  • 必要とされる人材とは

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32話 「魅力」より


男女のファッションを両方着こなすジェンダーレスタレントの少年・秋原鶫(あきはら つぐみ)を再起させるアドバイス

必要とされる人材とは何なのか

それは『好きなことに没頭し1/100万の人材になる』ことである

1/100万の人材とは金メダリストになるくらいの非常にレアな人材だが、これはとても高いハードルを越える必要がある

しかし1/100(3クラスに1人)なら何かに没頭すれば他人に取って代わられない武器になる

この武器を3つ揃えられれば1/100万の人材が完成するというわけだ

では武器となるものをどこで見つけ、どう磨くのか

劇中でその答えが2点、述べられている


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この2つを要約すると

武器は身近にたくさん転がっており、“とりあえず手に取る”

自分の手になじむ武器を見つけたら徹底的に使い込み、磨き上げる

 

自分だけの武器を見つけ熱中する事が、これからの時代に必要になる人材になるカギとなる

 

  • 自分時間と他者時間

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37話 「求める顔」より

 

ヒナがかつて主演した映画『一夏の絆』

その続編の撮影の時、ヒナの演技に違和感を覚えた烏丸は前作の内容、そして京極の言葉を思い出し、その違和感の原因は他者が望む行動だけをしている事を指摘した

 

堀江貴文氏の著書『時間革命』で時間には2つのタイプがあると記されている

それは自分時間他者時間である

自分時間とは自分がしたい事に使える時間を指す

例えば趣味や気の合う人や好きなイベントに行くなどである

逆に他者時間とは自分がしなければならない事や他人の為に費やした時間を指す

やらされている仕事、通勤時間、気を遣う飲み会、果てはネットやゴシップのバッシング活動とかが挙げられる

 

学生や社会人たちは上の人の言うことに絶対服従する(物になる)よう徹底指導される

それは時間を他人に差し出す(他者時間を使う)のが正しいという洗脳に他ならない

実際ヒナは幸せな家族に対して強い恨みを持っていて映画では視聴者が納得する演技をするだけと話す

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この答えに対し烏丸は人を物として振る舞い、他者に時間を与えるだけの考えを「ハリボテ」と称して反発した

 

『自分の為に』行動しているか『他人の為に』行動しているか

その価値観のズレと違和感が対立として生まれたのだ

 

  • 人の善悪の新たな判断材料

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47話 「察知」より

 

親より多く稼いでる子役・江永 総司(えなが そうじ)

特撮が好きな少年は親を養う為にしたい事を我慢して仕事をこなしていく総司を見かねた烏丸は自分のしたい時間を増やすべく「仕事」と「息抜き」を兼ねてヒーローショーに連れて行った際に言ったセリフ

 

人と付き合っていく中で、いい人なのか悪い人なのかの判断基準はどこで決まるだろうか?

こう聞かれた時、普通なら「優しさ」「信頼」「安心」などのワードが思い浮かぶだろう

だが、それらは時や状況が変化すれば関係も変化し、「こんなはずでは」と戸惑うことも珍しくない

 

なら何を基準に付き合うべきかを決めるか

それは自分の時間を奪わない人、自分の時間を増やしてくれる人である

 

例え親や恩人だろうが自分の時間を奪っていく人間との交流は断った方が好ましい

では悪い人、つまり自分の時間を奪う人間とはどんな人間か

劇中では総司の父親がいい例だろう

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親の収入を追い越され、ふてくされた父親は子供に存在を認める為のお金や時間を要求し奪い尽くしていく

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さらにタチが悪いのは彼が重度の我慢癖を持っている事である

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我慢癖を持っていると「自分と同じようにしなくてはならない」という価値観を他人に押し付けるようになる

その結果、自分で我慢する事を選んだクセに「自分は我慢してるのにズルい!不公平だ!」と怒るポイントがズレていき平気で他人に八つ当たりをするようになる

農業や高度経済成長の時代を生き抜いた者は、我慢や労働は正しく尊い行為だと学校や社会などで深く刻み込まれた疫病は今も脈々と受け継がれている

だが機械やAIが発達した現代で必要なのはこれをやりたい!』という気持ちを大切にする事である

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子供が就ける仕事から見える人生の視点

子供も大人も関係なく人間として生きてく上で必ず突き当たる問題をどう捉えどう考えどう選び、そして選んだ先が

 

 

 

何も考えず他人の為に動きロボットやラジコンカーみたいに良い様に動かされ、ただただ他人の言いなりとなる人生となるのか

それとも、子供の様に色々触れ、考え、動き自分も相手も有意義な時間を作り、好きなものを楽しむ仲間と笑い合える様な人生になるのか

 

 

 

どちらを選べば自分の人生に後悔がないのかを教えてくれる作品と言えるだろう